あらかわ ゆいの森

研修・視察

「全国若手市議会議員の会」の研修2日目。荒川区の「ゆいの森」や高架下に設置された保育園の視察、荒川区民総幸福度(GAH)について学びました。

ブログでは「ゆいの森」について報告します。GAHは受付業務のため、中途半端にしか聴けず…たいへん心残りとなりました。

あらかわ ゆいの森

荒川区の「ゆいの森」は、中央図書館を中心に3つの施設が入った複合施設です。ただ、担当者は「複合施設ではなく、融合施設です」と言うほど、その機能の一体化が図られています。

講義は、壁一面に絵本が展示された「ゆいの森ホール」で受けました。オシャレですね。区政の発信の場であり、地域の発表の場であるとされています。

概要

ゆいの森は2017年3月に開館した新しい建物で、中央図書館、吉村昭記念文学館、子どもひろばの3つが入った施設となっています。オープンして1年2ヶ月時点での来館者数は79万人を記録しており、利用者の8割は区民とのこと。避難所としても機能するため、備蓄品のスペースも確保されています。

あまりのスタイリッシュさに、どこが指定管理者となって運営しているのだろう、またTRCさんだろうかと思ったら、なんと直営。これには驚きました。1階のカフェには借りる前の本も持ち込めるなど、役所のイメージとはかけ離れています。

特徴

ゆいの森は、60万冊を収蔵する中央図書館としての一般的な機能に加えて、いくつかの特徴があります。まず前提として、従来のイメージのような、静粛にする図書館ではありません。地域コミュニティの拠点として、会話することも可能な場とされています。静寂の方が良い場合は、学習室を使ってくださいという立て付けです。

えほん館

こちらでは絵本に力が入れられており、柳田邦男氏に協力を仰ぎ、子どもだけでなく「絵本は人生に三度(幼少期、子育て期、人生経験を積んだ後)」というコンセプトのもと、3万冊の蔵書を誇り、エントランスでの展示や読み聞かせ、さらには絵本大賞を開催しています。

子どもが集い学ぶ場

乳幼児を連れて遊ばせることのできる「遊びラウンジ」は利用無料。それとは別に、有料で子どもを預かる託児室も設置されています。

さらに、学びラウンジでは、科学実験のような各種の体験キットが無料で借りられ、その場で学ぶことが出来ます。

文学館

荒川区で生まれ育った作家、吉村昭の記念文学館が建物内に入っているのですが、これはまさに図書館との融合と呼ぶにふさわしいでしょう。

当時の書斎を再現したスペースで、実際に使われていたのと同じ原稿用紙に書いて持って帰ることができるという工夫も施されています。

現代俳句センター

荒川区は、2015年に「俳句のまち宣言」を出しており、団体から大量の関連書籍が寄贈されました。それらを収蔵するスペースは「現代俳句センター」と位置づけられ、一つの文化の拠点とされています。

ビジネス支援コーナー

ビジネス支援コーナーでは、ビジネス関連書籍の配置に加え、産業経済関連の部署と連携して、定期的に中小企業診断士や税理士による相談が行われています。この機能を図書館に持ってくるとは、素晴らしいですね。
 

行政の壁を超えるために

ゆいの森で気づくことは、縦割り行政をどうにかして乗り越え、役所らしからぬ施設へと昇華させている点です。

設置にあたっては部署横断でコンセプトを議論し、さらに様々な施設を視察して、良い点を取り入れていったそうです。さらに、「ゆいの森課」として専門の部署をつくったメリットは非常に大きいとのことでした。

土地取得も含めた建設費用で90億円、ランニングコストは予算ベース4億円と、今の目黒区にはとても手が出せない規模の施設ですが、直営でも魅力的な空間をつくり出すことができる好事例でした。