AIと観光マーケティング(委員会視察3日目)

研修・視察

2018.10.24 生活福祉委員会 視察

委員会視察3日目、最終日は松江市で2つの事業をご説明いただきました。松江市といえば、自治体の業務効率化ランキングで1位になったり、プログラム言語Rubyを用いた地方創生が注目を集めたりと、先進的な取り組みが多いことで有名です。

生活困窮者自立支援事業

松江市では、2015年に開設され、運営が社協に委託されている「くらし相談支援センター」を中心に、様々な角度から生活困窮者の自立に向けた支援を行っています。

生活上の悩み事の相談に加え、一定期間の家賃給付を行う住宅確保給付金や、就労準備支援、家計相談支援、さらに緊急に衣食住の確保が必要な際の一時生活支援も提供されており、2017年の実績は相談件数が845件(うち新規は223件)、自立支援計画(プラン)の作成が60件、就労支援は158名となっています。

センター長、主任相談支援員、以下6名の相談支援員の計8名の体制となっており、月1回の支援調整会議では弁護士やハローワーク、学識など各分野の専門家から意見を聴取するほか、年2回の運営協議会では、市の各部署や地域団体など、非常に多くの関係者と課題や情報の共有を行っています。

他にも、法テラスによる週1回の助っ人弁護士制度や、県労働局と連携したハローワークプラスの設置など、できる限り同じ場所、近い場所で各相談者が抱える課題を解決できる体制を作っています。

市の様々な部署がバラバラに支援を行うのではなく、センターに集中させて「あそこに行けば何とかなる」と思ってもらえる場を提供していること、これが松江市の事業の大きな特徴と言えます。

観光マーケティング

松江市は、日本ユニシス株式会社と共同で、AIで統合した地域データと人流カメラを活用した観光マーケティングの実証実験を行っています。

松江市のオープンデータや、観光に関するサイトやSNSの情報などを、AIで機械的に統合して共通語彙の中に落とし込み、それを観光情報提供マップ「松江歩きNAVI」に出力して、観光客に提供しています。

加えて、情報がNAVIに一元化されていることによって、情報提供者側である市も、人々がどのような経路でどこを訪問し、何の情報を参照しているかといったデータを収集することができ、従来よりも詳細な動向把握ができ、細かな分析が可能となります。

さらに、日本ユニシス社が提供する人流解析サービスとも組み合わせて、松江歴史館の来場者数を予測する試みも実施しています。

観光客数やアンケート結果といった従来の指標だけでなく、Webから導かれる膨大なデータを参照することで、今後の観光マーケティング施策に活用できる可能性があり、EBMP的な観点からも注目すべき取り組みと言えます。

一方で、データの分析と政策立案をどう結びつけていくかについてのノウハウ構築や人材育成も欠かせず、松江市に限らず今後の自治体の共通課題となっていくでしょう。