役所を持たない自治体(特別委視察2日目)

西崎つばさの活動

特別委員会の視察2日目は、愛知県の高浜市で、リース方式での新庁舎整備を視察しました。市役所を「持たない」という画期的な取り組みです。

高浜市は面積13平方キロ、人口4万8千人で、現在も微増傾向にあります。やはりトヨタ関連の産業が強い地域です。

旧庁舎は、昭和52年に整備されたものでしたが、40年近くが経過して老朽化が進むと同時に、耐震化が未実施であったため、災害拠点としての機能が確保できない状態でした。耐震診断の結果、基準を満たしていないことは分かっていたのですが、小学校の耐震化を優先するという選択をしました。

その後、庁舎の改修や改築について具体的な検討を進める中で、そもそもの保有形態を見直す議論も浮上し、平成26年に基本方針が策定されました。考え方としては、シンボリックな市庁舎は不要であるとし、整備コストや維持管理コストを低減させて、その分を老朽化が同じく課題となっている小学校の改築に振り向けるというものです。

その結果、市役所そのものを20年間のリース契約で賃借するという選択肢が採られました。その理由として挙げられるのは、元々の庁舎の耐用年数を60年とした際に、残期間が20年であったことに加え、毎年のリース料支払いとなることで負担の平準化が図られるということや、20年後の行政需要の変化に柔軟に対応できること、建物内の設備の更新時期がほぼ20年後に到来することなどです。

費用は、既存の庁舎に耐震改修を施して20年間使用した場合のコスト(約33億2400万円)を下回ることが条件とされましたが、リース料の合計は31億3129万円と、実際にコスト削減にも成功しています。

整備にあたっては、文書などの保管場所を大幅に縮小するための2S(整理・整頓)活動が大胆に行われ、当初の4021fm(ファイルメータ)を1/5にするという目標には及ばなかったものの、2044fmと半減させることに成功し、全てを新庁舎に収めることができています。

スキームとしては、高浜市が事業者(ダイワリース)に無償で土地を貸し付け、そこに建築した建物を、市がリース契約で借りるというもので、メンテナンスも含まれているとの事。協定上は、原則更地にして返還するという契約になっていますが、20年後以降は今後検討されるとの事です。

市役所を持たないというのは、本当に思い切った選択だと思いますが、私が感心したのは、20年後の行政需要や技術革新、働き方や行政サービスの提供方法に対応できるようにという視点です。

ICT化やAIの活用、さらなる技術の発展に伴い、市役所のあり方が大きく変わる可能性は十分にあると思います。その際に、20年という区切りで市役所施設の機能を根本から見直すことが出来る体制というのは、今後大きな意味を持ってくるのではないでしょうか。

「自治体のステータスとしての立派な庁舎」という固定観念を捨て去って、将来の機能に着目した高浜市の手法は、大いに参考にしなければならないと思います。

最後に、3畳くらいしかない市長室の写真。隠し撮りみたいですが(^_^;)