合計特殊出生率は上がるのか?

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高まる少子化対策の重要性

危機的な出生数の減少

ここのところ、新型コロナ対策に追われる一方ですが、この国の大きな課題である人口減少・少子化への対策の重要性が失われた訳では全くありません。

むしろ、コロナ禍の影響もあると見られる出生数の減は相当深刻で、日本全体における昨年2020年の出生数の確定値は84万人台となる見込みであり、さらに今年は80万人台すら割り込む可能性があると報じられています。

100万人を切って社会に衝撃を与えたのが2016年ですから、これは危機的なペースであると言えます。一方で、ここのところ目黒区の出生数は年間2400~2500人台を横ばいという状況ですが、予算委員会の中では保育ニーズで0歳児が減っているという分析もされており、この間の動向が注目されます。

むろん、子どもを無理やり増やそうという話ではありませんが、何より重要なのは、夫婦が持ちたい子どもの数の理想と現実の乖離をなくしていくことであり、このためには様々な角度からの対策が必要となります。

少子化対策地域評価ツール

少子化への対策は、国をあげて何十年も叫ばれてきたところですが、新たな動きとして、まち・ひと・しごと創生本部が「少子化対策地域評価ツール」というものを提唱しています。

これは、地域特性を見える化し、具体的な取り組みの検討などの一連のプロセスをまとめて整備し、自治体に配布するというもので、国の資料によると、来年度にはこの少子化対策地域評価ツールを活用して課題を分析し、対応策を検討・実施するという自治体の姿が描かれています。

ただ、予算委員会の質疑で確認したところ、まだ目黒区には詳細が来ておらず、今後見極めていくとのことでした。EBPM(根拠に基づく政策決定)の重要性は、以前にも議会で議論させていただいたことがありますが、そうした考え方と少子化対策を結びつけ、有効な対策が打ち出されることを期待しています。

合計特殊出生率の罠

さて、関連して、現在の人口ビジョンでは、現在では1.05前後で推移している目黒区の合計特殊出生率を2040年に1.50に引き上げていこうという目標が掲げられていますが、これが現実的な数字なのか、少し考える必要があると思います。

出生率が、夫婦の希望の数に近い方が望ましいというのは言うまでもありませんが、目黒区の特徴に合致した目標なのか、と言い換えてもいいかも知れません。

目黒区における女性の人口動態を調べると、20代の女性が増えている一方、30代が減っていることが読み取れます。例えば、20代が2017年に約17400人、2021年に約18000人で600名ほど増えている一方で、30代は2017年に約26500人、2021年に約24400人で2100名ほど減っています。

察するに、若い女性が目黒を選んで移ってくる一方で、結婚して子どもを持つ頃に、他自治体に転居していくケースが多いのではないかと思われます。

もちろん、そのまま目黒に住み続けていただくのがベストですが、若い女性にとって魅力的に映るまちというのも一つの姿であり、決して否定されるものではありません。

そこで、合計特殊出生率を考えると、どうしたって上がりづらいという状況になります。そもそも、この数字は日本全体としては有効な指標ですが、15歳から49歳の女性の人口移動の影響を大きく受けるという特徴があります。出生数が同じでも、当該年齢の女性人口が減れば出生率は上がるし、逆に増えれば下がるのです。

目黒区の人口動態に、若い女性が流入しやすい一方、妊娠・出産する頃に流出していく傾向があるとすると、合計特殊出生率は構造的に上がりづらいと言えます。

一つの指標として無意味とは思いませんが、この数字が持つ特徴と、目黒という地域の特性を考慮しながら、今後の目標や、幅広い少子化対策を考えていく必要があるのではないでしょうか。