オンライン授業に向けて

研修・視察

2020.5.31 立憲都連セミナー(ICT教育)

9月入学に関する勉強会に続けて、立憲都連主催のセミナー。今日はオンライン授業などICT教育の現場で働く先生たちからお話を伺いました。

オンライン授業の現場

今日の講師は、私立の中高一貫校で4月から実際にオンライン授業を行っている先生方でした。iPadは4年ほど前に導入し活用していましたが、特にコロナ禍による休校となってからの2ヶ月間は、ずっとオンライン授業を続けてきたとの事です。

模擬授業を見学

はじめに、実際の授業を模した英語のデモ授業を見せていただきました。

事前の予想に近い形ですが、Zoomで画面を共有しながら、問題を当てられた生徒の回答を皆で確認。間違いがあれば先生が指摘し、画面に書き込んでいきます。

途中からは、各自の演習へ。取り組んだプリントや事前の課題などは、Google Classroomを使って送信でき、先生が添削して各生徒に返却します。個々にコメントを打ち込んで、やり取りすることも可能です。

うーむ、文字にすると伝わりづらい。

生徒はどう変わるか

次に、タブレットなどICTを活用した場合に、生徒の活動がどう変わるのか、スケジュールの一例を追いながら見ていきました。

ある生徒は、起床後に検温し、学校が用意した専用サイトに入力。そのまま宿題を片付けて、オンラインで送信します。

実際に登校した後は、限定ポータルサイトで学校からの連絡事項などを確認します。ここでは、中間テストの時間割や、今月の食堂のメニューなどが例示されました。

授業では、英語の単語テストでアプリを利用したり、体育の授業で自分の動きを動画撮影してチェックしたりと、従来型の指導とタブレットの活用が併用されます。

ホームルームでは、専用アプリに昨夜の勉強時間を入力したり、球技大会のメンバーを決めるのに、共通ファイルをクラスの全生徒が同時に操作して、名前を入力したり応援アイディアを持ち寄ったりします。

また、例えば昼休みに部活仲間とYouTubeでイメトレを行うなど、柔軟な使い方も認められています。

帰宅した後には、保護者が学校からの連絡をチェックできたり、宿題の不明点を解説動画で復習したりと、家庭での活用も大きな幅が持たされています。

先生によると、タブレットの導入によって子どものできることが増えると、学習面でも普段の生活でも工夫が生まれるようになり、主体性が増すとのことでした。

ICT導入のポイント

こうした活用を行っている現場から見て、導入のポイントは以下の3つです。

・端末を家に持ち帰れるか(非常に重要)
・6年間続けられる方法か(端末の切り替え時に問題がないか)
・いつの間にか使わなくならないか

上記を念頭に、3つの観点から整理していく手法が紹介されました。

授業デザイン

ライブ配信型/動画配信型/課題配信型という類型を組み合わせていく。

運用デザイン

端末の整備をどうするか。現実的には、以下のうち購入型かBYOD型ではないか。

端末シェア型

少ない端末を共有。自治体の負担は少ないが、家庭へ持ち帰れないため、導入効果が大幅に制限される。

端末貸与型

自治体で購入して1人1台を貸与。自治体の負担が大きいうえ、6年間同じ端末を使い続けることは困難。

端末購入型。

機種を指定し、各家庭で購入。全員が同じ機種のため管理しやすいが、家庭の負担が大きい。自治体の端末購入補助は可能性がある。

BYOD型

各家庭で端末を用意し、IDのみ配布。機種がバラバラのため管理がしづらいが、まずスタートするという場合には最も敷居が低い。これも、用意できない家庭に自治体が貸与することが想定される。

環境デザイン

ネットワーク/端末/周辺機器/ソフトウェア(G Suite for Education、学習支援アプリなど)の選定。アプリなどは無料のもので相当程度カバーできる。

ルール制限について

また、「いつの間にか使わなくならないか」というポイントについては、ルール制限をできるだけ排することが重要とのことです。

タブレットは「遊びにも使える」という問題をどこまでも抱えていますが、端末の利用方法を制限すると、教員側も生徒側も、不便で使わなくなることが考えられ、実際にそういった事例もあるようです。

そこで、一時的なカオスは不可避なものと捉え、ルール制限をするのではなく、使い方を指導していく方向に舵を切ることができれば、子どもたちも成長していくものであるという考え方を示していただきました。

そのためには「これでもいいかも」と言える空気づくりが重要とのことで、非常に理解できるところです。

まとめ

今回の学校では、一度に80名の生徒を相手にオンライン授業を行っていたとの事でした。2クラス分を2人の教員が同時に入るという考え方です。こうした、従来の授業スタイルをそのままオンライン化するのではなく、特徴に合わせたアレンジを加えていくことが成功の秘訣かもしれません。

緊急事態宣言が終了したとは言え、第2波・第3波を見据えた警戒下での学校教育は続きます。その中で、オンライ授業も含めたICTの活用は切っても切れない手法と言わざるを得ません。

今までのやり方から、スモールスタートでも良いので少しずつ切り替えていく。それを議会から後押ししていく必要があります。

今後、避けて通れない課題について、非常に参考になる現場の声を聞くことができました。

感謝。