ふれあうように学ぶ場(特別委員会視察)

研修・視察

2018.10.11 目黒区総合戦略等調査特別委員会視察

特別委員会の視察で、岩手県に来ています。今日は遠野市にお邪魔し、民間企業と連携して人材育成および地域振興の拠点を作り上げた「遠野みらい創りカレッジ」の取り組みを学ばせていただきました。

遠野みらい創りカレッジ

遠野みらい創りカレッジは2014年、遠野市と富士ゼロックス株式会社が協定を結んで運営が開始され、その後2016年には一般社団法人化して現在に至っています。なお、施設は閉校となった中学校の校舎を、ほぼそのまま残す形で活用しています。

人材育成や地域振興、産業振興などに向けた様々なプログラムが提供される学びの場であると同時に、全国共通の地域課題解決方法が模索されています。

キャッチフレーズとして「ふれあうように学ぶ場」を掲げており、企業や官公庁、大学、地域が同じ場で学び、腹を割って話せる場所と位置づけられています。

開校当初は年間3500名ほどであった参加者数は、2017年度には7000名を軽く突破し、その6~7割が市内の方で、小中高生を中心に若い年代の利用者が多いとのことです。

提供プログラムについて

交流

子どもたちの田植えや稲刈り体験や、地域でのお祭りやイベントの企画、スポーツを通じた交流など、地域を繋ぐプログラムが提供されています。

暮らし・文化

次世代の人材育成として、国際交流や総合学習のサポート、中高一貫学習プログラムの開発、職業体験など。また、防災研究として災害時の後方支援拠点についての研究などが行われています。

産業創造

森林資源に着目した、大学と市内企業の連携活動やコワーキングスペースの提供、また過去には地域の子ども達と連携した地元商店街の活性化などが行われています。

成功のポイント

成功した鍵として、行政ではなく民間企業が主導したことが挙げられました。一般的にも信頼性の高い大企業が、地元住民への地道な働きかけを行うことで、さらに地域の信頼を得たことが強調されています。

また、廃校の校舎が活用されることは、地域の方々にとっても歓迎すべきことであり、中学校の閉校にピタリとハマった事例と見ることもできます。

地域での成果

遠野市内には大学がなく、そればかりか市から大学に通っている学生も皆無とのことで、地元の中高生にとって大学が遠い存在であることが課題の一つでした。

ところが、カレッジで企業人や大学生、または海外の大学生と関わることで、子どもたちの視野が大きく広がる効果が得られました。中学や高校の先生方も、生徒の変化を認識・歓迎し、カレッジに協力的になっているそうです。

また、プログラムにグリーンツーリズムとしての民泊が組み入れられたことから、これまで中高生が中心であった客層が、大学生や社会人、さらに外国人へと拡大し、今後のインバウンドに向けて重要なコンテンツと位置づけられています。

まとめ

遠野みらい創りカレッジは、人材育成という観点はもちろんのこと、特に若い世代における交流・学びの拠点となっていることが分かりました。また、廃校の校舎を使って地域の課題解決を目指すという意味では、資源を見事に活用した事例とも言えます。

遠野市および富士ゼロックスは、走りながらカレッジをさらに発展させていくつもりとのことで、今後の展開が注目されます。また、民間企業が主導して地域の活性化を図る取り組みとして、すでに横展開も始まっており、こうした事例が全国各地で行われることは、自治体にとっても企業にとってもプラスとなる可能性を秘めています。

目黒区は、まだ地方創生とは縁遠い感はありますが、民間との連携という視点からは、大変参考になる事例と言えます。明日の視察も含め、いかに民間を活用していくかという考えを深めていきたいと思います。