雪の富士見市にて

研修・視察

大雪の翌日。交通機関が動くか心配ではありましたが、やや遅れている程度で運行していた東武東上線に乗り込み、富士見市へ。若市議の埼玉研修に参加してきました。テーマは以下の3点です。

1.手話言語条例
この条例は、鳥取県が全国で初めて制定したのですが、鳥取県知事の講演に感銘を受けた富士見市長が、同様の取り組みを市で進めるようにトップダウンで指示を出し、制定に至ったものです。

日本、ひいては世界において、手話が一つの言語であると認識されたのはごく最近の話であり、平成9年の時点ですら、71.5%のろう学校に手話を使える先生がいなかったそうです。

しかし、平成18年の国連総会で障害者権利条約が採択され、日本も平成23年の障害者基本法改正、24年の障害者総合支援法、25年の差別解消法を経て平成26年に批准するなど、聴覚に限らず障害に関する理解が深まってきている中、手話への理解を呼びかけ、深めることなどを目的として、鳥取県の条例制定から全国に広まってきているという流れです。

富士見市の場合は、理念条例であり、手話に関する施策を推進するための方針を策定することが柱になっていると言えます。同時に、やはり鳥取県がスタートしたもので、障害を知り、共に生きることを目的とした「あいサポート運動」に富士見市も取り組み、市民の理解を呼びかけています。

条例制定後、具体的な事業としては、事業者への啓発や職員向けの研修、広報誌へのコラム連載、市民への出前講座、手話フェスタの開催、タブレットを利用した遠隔手話通訳事業などが行われています。また、全ての中学校において「あいサポーター研修」が行われたとの事で、素晴らしい取り組みだと思います。

さらに効果としては、社協の手話講習会への申込みや、手話サークルへの参加者が増加したこと、各所管課からの手話通訳者依頼が増加したこと、市内の店で手話が通じる店あるいは筆談でも対応してくれる店が増えたということが挙げられていました。さらに理解が深まっていくことが期待されますね。

ところで、今回の研修で日本手話と日本語対応手話が違うことを初めて知りました。私も含め、それだけ言語としての手話が認知されていないということですね。反省です。

2.デマンド交通による実証実験
相乗りタクシーの事業かなと思ったら、全く違いました。
富士見市では、昨年8月から今月末までの半年間、既存のタクシーを利用した運賃の半額を補助する事業を行うことで、市民の移動状況、交通事情を把握しようという試みを行っているのです。こうして集まったデータを基にして、市の「地域交通会議」において、今後の地域交通のあり方を検討していく事になっています。

細かな数字は割愛しますが、やはり登録者数の半数以上が70歳以上で、半数が無職、女性が多めとなっています。実際の利用実績は、その傾向にさらに拍車がかかっています。一方で、30~40代の会社員の利用実績もやや多く、今後の課題が見つかるのかも知れません。

こうした実験データに基づく政策立案は非常に重要だと思います。今後どういった分析がなされ、どのような公共交通が必要であると判断されるのか、楽しみです。

3.富士見市PR大使
富士見市出身や在住の有名人を起用し、市のPRをしてもらう取り組みですが、どうしても目が行くのは、先日「ももクロ」を卒業した有安杏果さんです。

残念ながらPR大使も同時に卒業となるようですが、委嘱から2年の短期間の間に、ももクロの「春の一大事」というライブイベントを富士見市政45周年記念として共催で行い、2日間で4万人以上が訪れたというのですから、大変な成果です。チケットには市民枠を設けたり、市内の小学生をステージに登壇させ、ももクロと合唱したりと、市政はじまって以来の大イベントと評す向きもあるとの事。

富士見市にゆかりのある人物としては、釣りバカ日誌の作者である北見けんいち氏もいて、実際に市商店街のキャラクターを描いてもらったりしているようですが、ただ有名人を起用するだけでなく、メディアなどで発信力のある方に市のPRをしてもらうという戦略的な考え方をとっていることがポイントだと思います。