西崎つばさレポート13号(男性の育休)

レポートWeb版

父親も育休を取れる社会へ!

遠い昔に思えますが、今国会は働き方改革が焦点になっていました。裁量労働制の是非はともかく、現在の日本の労働慣行は、職場のみならず家庭にも悪影響を及ぼしていると思われ、法令だけでなく社会の通念を変える必要がありそうです。その中から、今回は男性の育休取得を取り上げます。

男性の育休取得の実態

厚生労働省の雇用均等基本調査を見ると、女性の育休取得率は近年80%以上を維持している一方、男性は過去最高となった2016年でも3.16%で、全く比較になりません。政府目標は2020年に13%ですが、率直に言って無理だと思います。

また、目黒区での育休取得率の統計はありませんが、2017年の区民意識調査では、育児を行うのが「主に妻(+夫が一部)」は51.5%、「同じ程度に分担」は9.2%、「主に夫(+妻が一部)」は0.4%となっている事に加え、家庭生活で「女性に対する差別や不利益がある」と思う割合が66%と、同様の傾向がうかがえます。

では、日本の制度が遅れているかというと、そういう訳でもなく、2010年の法改正を経て、世界でも有数の仕組みが整っています。(下部に解説

一方、NPO法人ファザーリング・ジャパンが2015年に実施した調査によると、妻の出産後、育児などのために育休以外の休暇(有給など)を取得した割合は46%です。

つまり、育休の制度があっても使えずに、別の休暇を取った父親が半数近いという事です。この状況、変える必要があると思いませんか。

「父親支援=最大の子育て支援」

育休取得に限りませんが、父親が家庭で役割を果たすよう促す意義は、大きく2つあります。

1つは少子化対策です。厚労省の調査では、夫が家事・育児に時間をかけるほど、第2子以降の出生割合が高い事が示されています。少子化が衆院を解散するほどの国難であるならば、ここに着手しない理由はありません。

もう1つはシンプルに、それが強力な子育て支援となるからです。現在も区、都、国と様々な子育て関連事業を行っていますが、当然、一定の予算が必要です。しかし、父親の育児支援は、現状が低迷しているぶん、政策として投資効果が非常に高いと考えられるのです。

さんきゅうパパプロジェクト

また、内閣府は、妻の出産後2ヶ月以内に夫が半日以上の休暇を取得するよう呼びかける「さんきゅうパパプロジェクト」を展開しており、2020年に取得率80%(2014年の民間調査では49%)を目指しています。

出産は「全治8ヶ月の重傷」であり、労働基準法でも産後8週は就業が禁じられていますが、その患者(母親)が24時間体制で赤ちゃんの世話をしている事を父親に自覚させる取り組みですね。

ハードルの低さは少し気になりますが、それでも育休取得のきっかけになる事が期待されます。

意識も支援も時代に合わせて

この40年間で、専業主婦世帯と共働き世帯の割合は完全に逆転しています。また、目黒区の調査によると、子どものいる世帯のうち、昔ながらの3世代家族の割合は10分の1以下です。まずは、こうした時代に即した理念を社会で共有しなければなりません。

また、千葉市は2014年から、男性の育休取得者とその事業主に奨励金を支給しています。東京都も今年から、男性従業員に育休を取得させた企業に助成金を出す事業を開始します。今後は目黒区も、どんな支援をすべきか検討しなければならないでしょう。私も働くパパ議員として、継続的に議論してまいります。

(解説)日本の父親をめぐる育休制度

パパ・ママ育休プラスは、保育園の不承諾が当たり前と言える昨今、有名無実化しています。

また、給付額および期間ボーナスと呼ばれる現在の仕組みは、男女の賃金格差も考慮するとインセンティブに欠けるため、実効性を高めるには、クオータ制(父親が受給しないと給付額や期間が消滅する)を検討する必要があるでしょう。

政策誘導を行いながら社会の意識を変えることで、「育休の制度があっても取得できない」という現状を打破し、より子育てしやすい社会を目指すべきだと思います。