画期的な判断!進むか、ギグワーカー問題

レポートWeb版

ウーバーイーツ配達員をめぐる労働者の権利

こんにちは。東京都議会議員(目黒区・39歳・3児のパパ)の西崎つばさです。

ようやく寒さが和らぎつつありますが、ひどい花粉症の私にとっては、辛い時期が迫っています。負けずに予算議会に臨みたいと思います。

さて、2021年5月の西崎レポートでは、フードデリバリーを念頭に、ギグワーカーと呼ばれる労働者が非常に不安定な労働環境に置かれている問題を指摘しました。

その後、東京都労働委員会から、ウーバーイーツの配達員を労働組合法上の労働者と認定する画期的な命令が発出されましたので、今回はその内容を紹介いたします。

何が問題だったのか?

デジタルプラットフォームを利用して働く人々は、時間や場所に囚われない自由な働き方が可能である一方、仕事の依頼や報酬額は会社側が優位に決定しているケースが多く見られます。

つまり、事実上は労務を提供し、その対価・報酬で生活をする労働者に近いにも関わらず、法的な保護がないという状況に置かれていることが課題となっていました。

そうした中で、2019年10月にウーバーイーツの配達員が労働組合を結成し、会社側に事故の際の補償などについて団体交渉を申し入れたところ、労働組合法上の労働者ではないとして拒否されたため、これを不当労働行為であるとして、都労委に救済を申し立てていました。

つまり、ここではウーバー社は「使用者」か、そして配達員は「労働者」かが争われました。

労働組合法(抜粋)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

※ 命令では、複数のウーバー関連会社を便宜上「ウーバー」と呼んでいることに準じて、本レポートでもまとめて「ウーバー社」と表記しています。

東京都労働委員会による命令

それから3年近い審査を経た2022年11月、都労委は以下のような命令を発出しました。

◇配達員は、労組法上の労働者にあたると考えるべき。
・ウーバー社の事業に不可欠な労働力として確保され、組織に組み入れられており、契約内容は一方的に決定されている。
・報酬は労務提供の対価の性格を有しており、業務の依頼を拒否しづらく、広い意味で会社の指揮監督下に置かれており、配達員に顕著な事業者性も存在しない。

◇ウーバー社は使用者の地位にあるというべき。
・登録や契約の手続き、説明やサポートなどを行っており、労働条件や経済的地位に関する事項を現実的かつ具体的に支配・決定できたと見るのが相当である。

◇よって、ウーバー社は団体交渉に誠実に応じなければならない。

これらは、労働者側の申し立てを全て認める、いわゆる「全部救済」の命令となっています。

この命令の意義と、今後の課題

公的機関が、いわゆるギグワーカーを労組法上の労働者であると認めるのは、日本で初めての出来事です。フードデリバリー業界に限らず、他のプラットフォーム事業者および労働者にも一定の影響を及ぼし得る判断と言えます。

しかしながら、ウーバー社は命令を不服として、中央労働委員会に再審査を申し立てたため、決着は持ち越しとなりました。

中労委における審査は1年3 ヶ月以内が目標とされていますが、都と異なる判断が出る可能性もありますし、どんな結論が出た場合でも、訴訟へと発展することも想定され、さらに長引く可能性も含んでいます。

労働者としての法的保護を認めた訳ではない

さらに、仮に救済命令が確定したとしても、今回の話は労働組合法の話にとどまっており、配達員と労働基準法や労働契約法の関係については、全く議論が進められていません。つまり、団体交渉が認められても、例えば配達員の長時間労働の規制や、最低賃金の保証についてすら、法的保護がなされる訳ではないのです。

EU においても、「プラットフォーム労働における労働条件改善に関する指令案」が審議されていますが、コストの増大を懸念する事業者と、幅広い保護を求める労働者の対立が鮮明になっています。

日本においては、ウーバーイーツ配達員のようなプラットフォーム就労者に対する法的保護の必要性について、ほとんど議論が進んでいないのが実情であり、その手前とも言えるフリーランス保護新法ですら、昨年末の臨時国会への提出が先送りされています。

今回の都労委の命令は、意図的かは別としても、こうした状況に一石を投じたものと言えるでしょう。

都として独自の取り組みを

東京都としても、国会の動きを見守るだけではなく、都内での実態把握や、ギグワーカーのトラブルに対応する専門の相談窓口の設置など、着手可能なことに取り組むべきではないでしょうか。

その上で、事例を分析しながら課題を整理し、働く者が使い捨てられるような事態を防ぐための施策を充実させるべきと考えます。

皆さまのご意見も、ぜひお聞かせください。

(参考)現在の相談窓口

下請センター東京 03-3251-9390

都内の中小企業・個人事業主・フリーランスなどを対象に、契約トラブル、代金の未払いや減額、不当な返品や損害賠償などに関する相談を行っています。

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