これからのコミュニティ(特別委員会視察1日目)

研修・視察

今度は特別委員会の視察で、再び関西に来ています。今日は奈良の生駒市と大阪の高槻市へ。生駒市は、区割り変更によって馬淵澄夫さんの奈良1区に変更された地域なんですね。少し寂しさを感じます。

<生駒市:自治基本条例をはじめとした市民協働>
生駒市では、(当たり前ですが)市民が参加しながら自治基本条例を制定し、広く協働を進めています。開発地域で、集合住宅にあっても単身世帯が少なく、自治会の加入率が80%を超えて推移しているという背景も相まって、もともと協働の土壌は築かれていたようですが、そこに当時の市長が強く旗を振って進めることになりました。

平成15年10月に、市民自治検討委員会設立準備会を設置。以降、シンポジウムや語る会などを経て、最終報告書が市長に提出されました。その後の市民自治検討プロジェクトチームでの議論・報告書の流れを受けて、平成18年に市民自治検討委員会が設立。学識経験者、市内団体、公募市民、行政機関、市職員を構成メンバーとし、広報広聴、地域コミュニティ、調査部会の3部会に分かれ、市民自治基本構想の策定が行われました。

そして、平成21年4月に自治基本条例案を市長に提出。同年の6月には議会上程され、全会一致で可決され、自治基本条例が成立しました。市民とは未成年も含むものとされ、成立当時から、市民投票が18歳以上とされていたり、また定住外国人にも投票券が与えられたりといった点が画期的な条例です。

なお、この類の話は、歴史的に議会の反発がつきものですが、市民自治検討委員会に2名の議員を出したり、全議員対象の勉強会を開催し、意見交換を行ったり、タウンミーティングに議員が毎回2名ずつ出席したりと、相互の理解、信頼を作り上げていったとの事でした。

また、条例の目的が実現されているかを検証するために、学資経験者、市民団体、公募市民、市議による「市民自治推進会議」が設置され、運用状況の確認のみならず、管理職を対象とした研修を実施、シンポジウムの開催、指針の策定、冊子の作成、条例の見直し検証作業などを行っています。

市民への浸透や理解が課題との事ですが、条例の認知度は平成22年11月で34.76%だったものが、平成26年12月には57.4%と、着実に広がっていると見ることができます。

さて、こうした協働の具体的な施策の目玉が、「1%支援制度」と呼ばれる「生駒市民が選択する市民活動団体支援制度」、通称「マイサポいこま」です。

NPOの事業に行政が補助をする仕組みは他の自治体でも見られますが、生駒市の場合は18歳以上の市民が一定額(平成28年で826円)の権利を持っており、支援したい団体の事業を選択するという点が非常に斬新です。つまり、市民の活動を市民が選んで応援できるという仕組みになっているのです。なお、支援したいものがない場合は基金を選択することも可能です。

平成28年の実績では、5344人から届け出があり、投票率ならぬ届出率は5.38%でした。やはり、ここでも率を上げることが課題となっていますが、ぜひ広げていただき、自らの街を良くするために、自らが支援する団体を決めるという意識、さらにはプレーヤーになるという意欲を育てて欲しいです。これには驚きました。

その他、協働に関したアイデアソン(シビックテックアワード)なども行われており、継続的にNPOなどとの協働を進める取り組みが行われています。

考えてみると、目黒でも町会・自治会の加入率が低下の一途を辿り、ついには50%を切る状況になっていますが、そこは目的ではなく手段なんですよね。町会や自治会などの地縁系組織、事業者、NPOなどのテーマ系組織を併せて「市民」です。

地域のつながりを築くうえでの町会を否定するつもりはありませんし、私も深く関わっていますが、そうではない協働の回路、自分たちで地域を良くしていこうという運動からコミュニティ施策を考えなければならないように感じさせられました。

<高槻市:地区コミュニティ、コミュニティ市民会議>
高槻市のコミュニティ施策については、歴史的な背景を受けて非常にしっかりと作り込まれてきた印象を受けました。昭和33年に合併して現在の市域となった時の人口が7万人あまりでしたが、昭和40年には1.8倍の13万5千人、昭和50年にはさらに1.5倍の33万人以上と、急激な人口増加を経験し、個人では解決できない課題が増加し、コミュニティの礎が出来上がったとされています。

最も基本的な単位自治会は1038もの数がありますが、さらに32の地区コミュニティ(概ね小学校地区程度)が設置され、そちらには571自治会が加入しています。地区コミュニティが、目黒でいうところの住区に近いと思われますが、福祉、PTA、防犯、防災組織などが相互連携をして包括的な活動を行うものとされています。32地区全てに、1箇所の活動拠点施設が整備されているのも似ている点でしょう。

そのさらに上位版として、コミュニティ市民会議というものが存在します。昭和51年に発足した組織で、昨年で40周年を迎えたそうです。各地区コミュニティから4名を選出しており、全体では4×32で128名となりますから、かなりの大きな組織体ですね。連合組織として、全市的なコミュニティの課題解決や情報発信、地区コミュニティ間の連携と交流、地域リーダーの育成などを行っています。

一方、最近では自治会の加入率が60数%となっており、目黒区と同様、既存のコミュニティに所属しない人々への対応が課題と言えそうです。これまでのコミュニティを結びつけ、具体的な活動や成果をあげることには大成功してきた好事例だと思いますが、その経験を活かして、新しい方々へどうアプローチしていくのか、注目されます。