突き進む函館市議会(議運視察)

研修・視察

2018.10.4 議会運営委員会視察

議会運営委員会の視察2日目。函館市議会の議会改革、特にタブレット端末の導入について学びました。以下、ご報告します。

函館市議会の議会改革

あまりに有名な函館市ですが、平成の大合併における北海道の第1号事例として今の形となりました。面積は677平方キロメートルと広大ですが、人口は約26万人と目黒区(28万人弱)と同程度で、北海道新幹線などを追い風に、特に観光業を推進しています。

ICT化

函館市議会は、今年2018年5月からタブレット端末を導入し、会議などでの活用を始めました。昨年8月に設置された検討委員会で9回ほどの議論や検討を重ね、導入に至ったとのことです。

また、それに先んじて、各種通知をメールに一本化する取り組みも施行されています。「まだそんなことやってたの?」と思われるかも知れませんが、多くの議会ではいまだに紙文化から抜け出せておらず、目黒区議会も、メールで連絡することはあっても、同時に紙媒体での連絡も欠かしません。

当たり前ですが、タブレット端末導入に合わせて、クラウドシステムも採用し、資料のデータ化、クラウド化、完全ペーパーレス化を果たしています。

30名の議員全員にタブレットが貸与され、各種会議には必ず持参するよう定められており、それ以外の活動にあっても可能な限り携行することが求められています。

一方、行政側は未だに紙媒体のみの取り扱いとなっていますが、現状では不都合は出ていないとのこと。

政務活動費の透明化

函館市議会では、政務活動費(政務調査費)の導入当初から、他の活動が混在する場合の按分支出を認めていないという特徴があります。よって、ガソリン代や携帯電話料金などは一切認められません。

また、初期から領収書や視察報告書など全ての関連書類を閲覧、公開の対象とし、2012年からは全てがホームページで公開されるようになりました。

なお、目黒区議会に同様の規定はありませんが、私も上記の支出やタクシー代などは計上していません。また、領収書など全ての資料を自らのサイトで公開しています。

もう一つ函館市議会で特徴的なのは、各会派の会計担当者と事務局で構成される「政務活動費運営協議会」を設置し、判例や他自治体の事例を見ながら、定期的に使途基準の見直しを行っているという点です。ここまで徹底している議会は珍しいと思います。

一問一答方式

函館市議会では、一般質問において一問一答方式を導入しています。

検討課題のまま保留されていた時期もあったようですが、2011年に当時の議長が導入の検討を議会運営委員会に諮問し、翌年2012年に試行、本格導入に至りました。

かつての一括質問方式の際は、理事者の職級順に答弁があったため、質問順ではなく分かりづらいという難点がありました。質問自体の趣旨、意図、各項目の関連が分かりやすいというメリットはありますが、演説調になりやすいという指摘もあります。

一方、一問一答方式も細かい質問になりやすい点や、通告内容を全て終えないまま時間切れになってしまうおそれもありますが、試行時の傍聴者アンケートでは非常に好評だったとのことで、そのまま本格実施に至っています。

日本全体では9割の地方議会が導入している一問一答方式ですが、23区では新宿区が代表質問で採用しているのみです。今後どうなるでしょうか。

議案の審査方法

函館市議会で最も特徴的と言えるのが、議案審査の方式です。予算特別委員会を常設し、全ての議案がそちらに付託され、常任委員会が分科会として所管事項を審査するという手法を採用しています。これによって、補正予算なども各委員会の専門性を発揮して審査できるようになっています。

また、議案審査の前日には委員が集まって論点整理を行い、それを基に当日の質疑を行い、解明した疑義について議員間討議を行い、賛否の理由を明らかにしたり、場合によっては修正したりする仕組みとなっています。委員個人ではなく、委員会として審査することが重視されており、非常に重要な視点だと思います。

さらに、議案審査と一般質問を明確に区分するために、定例会では議案の採決後に一般質問を行うこととなっています(目黒では議案審査前に一般質問を行います)。

なお、様々な報告事項は文書で済まされ、議案以外の委員会の役割は、所管事務調査が主なものとなっています。

まとめ

函館市議会では、メインテーマは議会でのタブレット端末導入でしたが、その他の議会改革についても、話を聞けば聞くほど、独自路線を貫く特徴的な議会であることが分かりました。

特に、定例会の流れにおいては、議案審査が優先だという意思が明確に表れており、原理原則を大事にしている姿勢に感心しました。

昨日の北斗市議会も併せて、今後の目黒区議会の改革に活かしてまいります。