インバウンドのインパクト

研修・視察

特別区の観光振興

定期的に実施されている、特別区議会の講演会。普段は行ったり行かなかったりですが、里山資本主義の藻谷浩介先生が講師を務められるということで、完全に釣られて参加しました。テーマは「特別区の観光振興」です。

人口減少のリアル

藻谷先生は、「デフレの正体」などで人口減少の影響の深刻さを指摘されていますが、今日の講演でもあらためて人口構造について解説いただきました。

人口増減では勝ち組だと思われている首都圏(一都三県)は、この5年間で人口が73万人増えています。ところが、その内訳はあまり知られていません。

実は、65歳以上が109万人増える一方で、15歳から64歳(生産年齢人口)は27万人減少しているのです。増加のうち、75歳以上は77万人と、全体の増加数を上回っている状況です。

23区だけで見ると、まだ各年齢階層ともに増加していますが、将来の高齢化は明らかであり、旅行や観光をしない、お金を使わない人口が増えていくことは容易に想像できます。現時点ですら、日本人の宿泊客数は一部を除く各都市で減少しています。

ターゲットは外国人

一方で、東日本大震災に伴って訪日客数が落ち込んだ2011年以来、外国人宿泊客数は4倍という劇的な増加を見せています。日本政府観光局は先日、2018年の客数が3119万人であったことを発表しました。

https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/190116_monthly.pdf

別の角度から見てみると、アメリカ人の214人に1人が日本に来ている計算になります。さらに中国は169人に1人、韓国は7人、台湾は5人、香港は3人、オーストラリアは45人…となっており、今後、中国からの客数が増えないわけがないと思われますし、東南アジア諸国からの訪日客も期待できます。

このように、インバウンド観光は、これから伸びることが確定している数少ない分野の一つとなっており、観光業に限らず、一部の企業はターゲットを外国人客にシフトしています。

受け入れ側の問題

ところが、いざ外国人観光客を受け入れようとした際に障害になることが3点あると、藻谷先生は指摘しています。

飲食店での喫煙

1つ目は飲食店での喫煙という問題です。改正健康増進法に加え、東京都では独自の条例によって、従業員を雇っている店舗では原則屋内禁煙となりますが、国の制度はザル、都も新型タバコの喫煙専用室という抜け道もあるなど、世界の標準には到底及ばない状況です。

以前にも指摘しましたが、WHOのガイドラインにも明らかに抵触している中、世界中のお客さんから理解を得るのは難しいでしょう。これは私も、早急に踏み込むべきだと思っています。

Uberが使えない

次に挙げられたのが、移動にUberが使えないという点です。

自分の端末で予約でき、目的地も指定でき、支払いまで済ませられるUberのシステムは、現地の言葉が話せないお客さんには決定的に重要です。

日本では白タク禁止の観点で議論がされていますが、そもそもタクシーがUberのシステムに乗っかってしまえば良いのでは、と先生は指摘します。なるほど。

鉄道の英語併記

最後は鉄道の英語併記が徹底されていないという点です。

母国で利用していると気づきにくいと思いますが、英語での案内が全ての表示に付属しているわけではないため、混乱をきたす場面がある、ということです。これは直ぐにでも対応できそうです。

魅力を創造する

さて、特別区として観光施策を打っていくためには、何を武器にするかを考えなければなりません。ところが、それは印象的なスポットや施設である必要はなく、「東京住民の静かで豊かな暮らし方の追体験」が最大の魅力であると言います。

外国人が、日本を訪れて予想外に良かったこととして、「静かだった」ことを挙げています。目黒区は閑静な住宅街が形成されている地域ですが、そうした地域だからこそ発信できる魅力もあるはずです。

サンマや桜も素晴らしいですが、外国人が訪れたくなる「今だけ、ここだけ、あなただけ」を探して、今後も調査を続けていきたいと思います。