不妊治療の基礎を学ぶ

研修・視察

2020.5.15 不妊治療・性教育PT 勉強会

東京若手議員の会に新たに設置された「不妊治療・性教育PT」にて、不妊治療に関する基本的知識のZoom研修が行われ、参加してきました。講師は、順天堂大学・産科婦人科学の黒田恵司先生です。

区民の方からのご意見を頂き、私の2019年マニフェストにも不妊治療の支援強化を掲げさせていただいていますが、症状や治療についての専門的な知識はそれほど多くありませんので、大変貴重な機会となりました。

また、治療費の助成以外に行政がすべき支援として、事業主が不妊治療の必要な従業員に必要な対応を理解していないケースが大多数である現状に鑑み、指針などを策定する必要性をご指摘いただきました。

以下、大まかですが自分のメモ代わりに残しておきます。

不妊症について

月経周期ごとの妊娠率は、ウサギやマントヒヒが80~90%であるのに対して、人間は20%程度と低い。ただ、計算していくと、人間が妊娠する確率は半年で70~80%、1年で93%、2年でほぼ100%となる。ただし、現在の不妊症の定義では、1年で区切っており、避妊せずに普通の夫婦生活を送り、1年が経っても妊娠しない場合としている。

不妊症は男女双方に原因が考えられ、子宮内膜症や精子運動障害、排卵障害など。やはり加齢による要因が大きいと考えられている。

卵管機能障害、受精障害、卵活性化障害など、原因検索ができないため突き止められないケースもある。

不妊治療について

タイミング法

ホルモンの値や基礎体温で排卵の時期を予測し、それに合わせて性交渉を行う。不妊の原因が分かって取り除いた場合以外は、ほとんど妊娠しない。

配偶者間人工授精

精子を遠心分離機にかけて運動性の高い精子を回収し、子宮内に注入。90%以上は3~4回で妊娠。これで成功しない場合は、調べられない部分に原因があると考えられる。

体外受精

排卵誘発をして採卵、媒精・培養して胚移植。1978年に英国で初めて行われた。さらに、その子どもも生まれており、何の問題もないことが分かってきている。

顕微授精

卵細胞室内に精子を直接注入する。

胚凍結保存

妊孕能の保存。新鮮胚移植より凍結胚移植の方が、妊娠率が高い。排卵誘発に伴う合併症のリスク減。生殖補助医療の45%が凍結融解胚移植。

年齢別の対応

35歳以下ならタイミング法、その後に人工授精。40歳以上ならART(生殖補助医療)。妊娠率はタイミング法1~3%、人工授精8%、初期胚移植20~40%、胚盤胞移植30~50%。40歳以上だと下がる。

治療費について

保険診療と自費診療があるが、大半は自費診療。不妊症の一般的な検査は保険適用可能だが、タイミング法で排卵誘発が必要な場合や、人工授精・体外受精は適用外。概ね100万円~200万円程度。

不妊治療助成は2004年から始まり、拡大されてきている。2014年以降、通算助成回数を年齢(42歳)で分けているが、医学的には妥当な線引きであると言える。

その他

安全に出産し、子どもが成長するところまでが大事。低出生体重児の場合、発症リスクが上昇する疾患が多くあることが最近わかってきた。マウスでの実験段階だが、母体の中で栄養などの環境が悪いと、子どもに影響し、さらに孫まで影響するデータ出ている。

妊娠前の段階からの「プレコンセンプションケア」が重要。ビタミンDが低いと着床しづらい。日光を浴びないと下がる。サプリメントなども有効。

不妊治療と就労

労働人口に占める女性の割合は44.5%で、うち生殖可能年齢は70%。治療を受ける場合、最低でも月に5回は通院が必要。

先生の研究では、不妊治療開始時には8割近くが就労しており、不妊治療後の離職率が20.7%。40%は職場にカミングアウトできていない。83%が、就労と不妊治療の両立が困難と感じている。

不育症

Superfertility。妊孕能が非常に高く、3ヶ月で90%妊娠するが、流産率が高い。

流産を繰り返す不育症。65%が原因不明。本来であれば淘汰される胚が着床してしまうことが原因の一つではないかと考えられている。