最期まで安らかに眠れない?区部の火葬問題

レポートWeb版

こんにちは、都議会議員の西崎つばさ(目黒区・42歳・3児の父)です。

さて、都政で急浮上した火葬場の問題ですが、23区でいったい何が起きているのでしょうか。今回は、誰もが避けて通れない「人生最後のセレモニー」の課題について、ご報告します。

区部の特殊事情

大切な方が亡くなった際、東京においては事実上、最期は火葬が義務となっています。

例えば、目黒区をはじめ多くの自治体で、全域が土葬禁止地域に指定されており、それ以外の方法では死体損壊罪や遺棄罪に問われかねません。

では、その火葬サービスは誰が提供しているのかというと、実は23区には公営火葬場が2つしかなく、必要とされる能力の20%程度しか備えていないため、大部分を民間に頼っているのです。これは、全国的にも異例です。

しかも、上記の地図から分かるように、多くの方がA社の火葬場を利用せざるを得ない環境ができており、ほぼ独占(寡占)状態にあります。

ただ、A社は長らく公益目的に則った運営がなされ、大きな問題は発生してこなかったのですが、2020年に中国資本の傘下に入って以降、相次いで値上げが行われ、すでに当時の1.5倍となっていることが、いま問題視されています。

さらにA社は、区民のために割安に設定された「区民葬儀」の枠組みから、2026年3月末をもって撤退することを表明しました。これまで事業者の善意に支えられ、59,600円に抑えられていた火葬料金が、一気に値上がりすることになります。

これを受け、区長会は新たな助成制度を創設すると発表しましたが、便乗値上げのイタチごっことなる恐れもあります。

法令の抜け穴

問題なのは、この値上げを止める手段を政治・行政が持っていないという事です。

現行の法令は、自治体が火葬場を運営することを前提としており、民間事業者が値上げを繰り返す事態を想定していません。

例えば電気やガス、鉄道やバスなどは総括原価方式によって料金の安定が図られていますが、こういったコントロールも効かず、完全に抜け穴となっているのです。

仮に料金が100万円に引き上げられたとしても、私たちは義務を果たすためにお金を払うか、遺体の引き取りを拒否して葬儀を行政に委ねる二択を迫られることになります。

こんなことがあって良い訳がありません。

火葬料金引き下げPT

そこで、私たち立憲系会派は、8月に「火葬料金引き下げプロジェクトチーム」を設置し、短期間に集中して勉強会を実施しました。

さらに政策提案のための検討を重ね、9月22日には会派から小池知事宛てに、要望書を提出する運びとなりました。

都の新たな動き

すると、その2日後、知事は都議会本会議の所信表明で、火葬体制の問題に取り組むことを明らかにしました。

火葬問題に取り組むことを表明する小池知事

知事発言の抜粋(9月24日)

また、今後の人口動態等を踏まえ、東京全体で安定的な火葬体制を確保することは重要です。

都は、火葬場を指導監督する区市町村と連携しまして、料金を含む火葬場の経営管理に対する指導が適切に行えますよう、法の見直しを国に求めていくとともに、実態を精緻に把握した上で火葬能力の強化に向けた取組を検討してまいります。

今後の展望

都が積極的な姿勢に転じたことは評価できますが、今後の道のりは平坦ではありません。料金を監督する法的な整理や、新たに火葬場を整備する場合の立地など、多くの議論が必要です。

多死社会を迎えた中、火葬のニーズは2050年頃までは減らないと見込まれています。人生最後の儀式を安心して迎えられるよう、私も引き続き取り組んでまいります。

皆さまのご意見も是非お聞かせください。

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